株式投資をしていると年間で得た利益や損失をどのように扱うべきか迷うことがありますよね。特に確定申告の時期になると「株の確定申告はどうやってするの?」「損益通算って何?」といった疑問が頭をよぎります。
この記事では、株式投資の確定申告の方法と、利益と損失をどのように相殺するか、つまり損益通算の方法について、初心者にも分かりやすく解説します。
さっそく確定申告で株の損益を正しく扱うコツをみていきましょう。
確定申告で必要な書類とその準備方法
株式投資の確定申告を行う際には、いくつかの重要な書類が必要になります。この章では、確定申告で必須となる書類とそれらを準備するための手順について説明します。
【株式投資の確定申告の必要書類】
①税務署へ提出する書類
- 申告書 第一表、第二表、第三表(分離課税用)
- 株式等に係る譲渡所得者の金額の計算明細書
- 令和○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)※譲渡損失の損益通算または繰越控除をする場合に必要
②確定申告書類の作成に必要な書類
- 株の取引金額を確認できる書類(金融機関発行の特定口座年間取引報告書など)
- 令和○年分源泉徴収票(サラリーマンなど給与収入がある場合)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
税務署へ提出する書類は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。株の取引金額を確認できる書類は、株取引をしている金融機関からの郵送や、マイページからのダウンロードで入手可能です。
正しい書類を適切に準備し、確定申告の手続きをスムーズに行うことができるようにしましょう。
確定申告で株の損益を相殺する方法【損益通算・繰越控除】
確定申告では、株式投資による損失を利益から差し引くことができる「損益通算」という制度があります。この制度を利用すると、支払う税金の額を減らすことが可能になります。
しかし、損益通算を行うためには、いくつかの条件があります。
【株の損益通算の条件】
- 取引している株が上場株式であること
- 通算できるのは同年中の取引の損益のみ
これらの条件に当てはまる株式取引について、確定申告で損益通算を行うことによって3年間にわたって損失を繰越すことができます。この制度を繰越控除といいます。
ただし、損益通算を行った場合、繰り越しを行う3年間については、株式取引をしていなくても毎年確定申告をする必要がある点に注意しましょう。
株式投資の確定申告で知っておくべき変更点
確定申告の手続きは毎年少しずつ変わることがあります。特に株式投資においては、税法の改正により確定申告のルールが更新されることがあります。この章では、最新の確定申告における株式投資の変更点についてお伝えします。
変更点1:課税方式の統一
令和5年分の所得税の確定申告(令和6年度の市民税・府民税[個人住民税]課税)から、上場株式などの配当所得などに関する課税方式が所得税と個人住民税で統一されました。
これまで、所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択できましたが、改正により、所得税で申告不要を選択した場合、個人住民税でも申告不要となり、所得税で総合課税や分離課税で確定申告を行った場合、個人住民税でも同様の課税方式が適用されるようになります。
変更点2:特定株式の収入に関する「申告不要制度」の記入欄削除
確定申告書第二表から、特定株式の収入に関する「申告不要制度」の記入欄が削除されました。これは、令和4年度の税制改正の影響で、令和5年分からの所得税の確定申告において配当所得や譲渡所得に関する課税方式が変更されたためです。
変更点3:インボイス制度への対応
2024年提出の確定申告書類では、青色申告決算書および収支内訳書がインボイス制度に対応した用紙に変更されています。これは、事業者が取引の際に消費税の適正な処理を行えるようにするための制度変更です。
確定申告の手続きの変更点について、詳しい情報は国税庁のホームページを参考にしてください。
確定申告における電子申告のメリット
近年、確定申告の手続きはオンライン化が進んでおり、電子申告(e-Tax)を利用することで、より便利かつ迅速に申告を完了させることができます。
特に株式投資の確定申告においては、取引の明細をデジタルデータで管理している場合が多く、電子申告を利用することで効率よく確定申告を行うことができます。
【電子申告のメリット】
*還付処理が早くなる・・・e-Taxでの申告では、通常3週間程度で還付が処理されます。これに対して、紙で提出した場合では、還付まで1ヶ月から1ヶ月半かかることがあります。
*24時間いつでも申告可能・・・e-Taxを利用することで、曜日や時間を問わずいつでも申告が可能になります。確定申告の期限最終日であっても、オンラインで提出できれば期限内として受理されます。スマホでも申告が可能です。
*提出書類の準備が楽・・・一部の添付書類が省略可能であり、電子データで提出できる場合もあります。
*青色申告特別控除が10万円増える・・・e-Taxまたは「優良な電子帳簿」の要件を満たすことで、原則55万円である青色申告特別控除が65万円に増えます。
確定申告をしなかった場合のペナルティは?
1. 無申告加算税
期限後に申告した場合、納付すべき税額に一定の割合が加算されます。通常、税務調査などにより発覚した場合は10%が加算されますが、自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減されることがあります。
2. 延滞税
期限後申告によって納付する税金には、提出日までの分の延滞税が発生します。延滞税は納税額の年率に基づいて計算され、納税が遅れれば遅れるほど負担が大きくなります。
3. 過少申告加算税
過失により、申告した税額が実際に納めるべき税額よりも少なかった場合、過少申告加算税が課されることがあります。過少申告加算税の税率は、新たに納める税金の10%から15%になります。
4. 重加算税
意図的に税金を少なく申告した場合、重加算税が課される可能性があります。このペナルティは非常に重く、本来納めるべき税額の35%または40%が加算されます。
5. 青色申告特別控除の減額
期限に遅れて青色申告を行った場合、青色申告特別控除が最大65万円から10万円に減額されます。
期限を過ぎた場合の対処法としては、できるだけ早く申告を行い、必要な税金を納付することが重要です。また、期限後1か月以内に自主的に期限後申告をすれば無申告加算税が免除される可能性があります。
正しい知識を持つことで、確定申告をスムーズに進めることができ、税務上のリスクを避けることが可能になります。
株式投資の確定申告についてのまとめ
株式投資の確定申告では、利益と損失の損益通算、電子申告のメリットを理解しておくことで、税金の負担を適正に保ちながら、投資活動を続けることができます。
確定申告は、投資家としての責任でもありますので、期限内に正確な申告を心がけましょう。また、確定申告を通じて、自身の投資戦略を見直す良い機会ともなり得ます。
最後に、不明点がある場合は、税務専門家に相談することをお勧めします。
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