★家族信託のイメージは銀行や信託銀行が預金などを把握して管理すると思っている方も多いのではないでしょうか?
→ 全く違います!!
★財産をたくさん持っている方しか関係ないと思っていませんでしょうか?
→ こちらも違います!!
それでは、家族信託とはいったい何でしょう?
家族信託は、よくCMに出てくる信託銀行のように営利を目的にしたものではありません。
信託銀行のCMは、主に商事信託のことです。
これを読んだだけでも、え!?そうなの?と思いますよね。
混同されますが、違う制度です。
主に手続きは、銀行や信託銀行ではなく、登記などを行う司法書士さんが担っています。
家族信託とは?
自己の財産(金銭や不動産など)を
信頼する人(受益者)に託し、
その目的に従って管理運用してもらう制度です。
・委託者・・もともと財産権をもっている人
・受託者・・財産の管理・運用・処分をする人
・受益者・・利益を得る人
↓
自分の財産を信頼できる家族の誰かに託すことができる制度なのです。
それを遺言ではなく生前から、決めることができます。
従来の遺言書や成年後見で叶わなかった財産の受け渡しや財産管理ができるということなのです。
これは画期的ですよね!
それでは家族信託を使うことにより出来ることを具体的に3つ挙げてみます。
①財産の所有権を【名義】と【財産価値】にわけて考えることができます。
委託者・・もともと財産権をもっている人(例)父親
受託者・・財産の管理・運用・処分をする人(例)子
受益者・・利益を得る人 (例)母親
父親が所有する家を子どもに信託すると、
【名義】だけが子に移り、
【財産価値】は父親のままです。
そもそも【名義】と【財産価値】をセットで考える生前贈与や売買とは考え方がちがいます。
もし、父親が判断能力を失って、
【名義人】である子が信託契約に基づき、実家を売却したり、賃貸に出したりできます。
税務上の主体は父親なので、【財産価値】を決める売却の場合、譲渡所得3000万円控除も利用できます。(税務上の要件に当てはまる場合)
父親亡き後、母親を受益者として指定すれば、そのまま母親が住み続けることができます。
相続税の軽減にも使える場合もあるし、売却代金や賃料を受け取る方法もあり、
母親が判断能力を失っても、家が資産凍結するという心配はありません。
②高齢者や障がい者等の財産の管理能力に乏しい者等が、信頼できる親族等にそれを委託することで預金凍結防止できます。
③兄弟で一方が死亡した場合、相続人がその子にうつるとなれば、共有となると土地に住めないリスクがでてくる可能性もありますが、家族信託であれば兄弟の一方だけの判断で管理、運用、処分ができるため、共有不動産のリスクを回避できます。
家族信託についてざっくり説明します。
1.家族信託で発生する5つの費用
・コンサルティング費
・公正証書の手続き費用
・公正証書の作成費
・司法書士等への登記依頼費
・登録免許税
2.信託できる財産
・金銭、不動産所有権、借地権、動産、ペット、上場株式、非上場株式、著作権、知的財産権、債権、将来債権(未現実の請求権)とさまざまなものが信託できます。
委託者の財産から分離できない借金やローン、預金口座など、信託できない財産もあり、住宅ローンなどは不動産を信託、マイナス部分を債務と、両方を引き受けることができます。
遺言書と家族信託!
遺言書は、生前に自身が亡くなってからについて書くことです。
家族信託は、有効となる範囲の広さです。
書面に明記さえすれば財産を託す側が生きていても、亡くなった後でも有効となるのです。
ですので遺言書を作成したという方も家族信託は遺言書の内容を補うことができるのです。
そして、遺言書と併用可能なのです!
また逆に家族信託できない財産を遺言で指定しておくのが賢明です。
成年後見制度とは?!
成年後見制度には2種類あります。
法定後見制度
補助・・判断能力が不十分な人
補佐・・判断能力が著しく不十分な人
後見・・判断能力が欠けているが通常の状態
任意後見制度
本人の判断能力が不十分になったとき、本人があらかじめ結んでおいた任意後見契約にしたがって、任意後見人が本人を援助する制度。家庭裁判所が任意後見人を選定した時から、契約の効力が発生します。
さて、もし被相続人が生前認知症であった場合に遺言の有効性があるかどうかは成年被後見人(保護の対象者)が遺言を作成できるかどうかです。
①被後見人において、判断能力の回復がみられ
②医師2人の立ち合いがある
→心身とも健康なうちに作成することが重要なため、認知症になって遺言書の有効性はきわめてまれです。
判断能力が衰えた人のために後見制度でできないこともあります。
・生前贈与
・不動産の購入や事業拡大への投資
・不動産の売却、所有する不動産の大規模修繕に費用を投じることも認められないケースが多い
成年後見制度は本人の判断能力が回復、または亡くなるまで継続されるため手続きや財産管理といった後見人が必要となるシーンが発生しない場合でも後見人を監督する後見監督人への報酬が発生、その報酬は裁判所が決定します。
後見人ができることは、あくまでも本人のための資産の保全
そのため資産を長期的に増やすための投資、主に相続税の軽減対策はできません。
↓
後見制度は認知症になってしまった後で本人の手助けしてくれる優れた制度ですが、裁判所に任命された後見人がついてしまうと、いくら家族であっても本人の資産をどうにかできるものではなくなります。
まとめ
相続対策の有効な3つの方法があります。
・家族信託を利用する
・遺言書を作成しておく
・生前贈与をする
相続でこれだけは知っておきたいポイント
・円満な遺産分割に有効な手段を知っておく
・なるべく相続財産を引き下げておく
・納税で困らないために現金を手元に用意しておく
・残された遺族の安心できる生活を確保する
・二次相続を見据えた準備をすること
家族信託をするなら考えること
・どのような目的で信託するのか
・どの財産を信託するのか
・誰が受託者になるのか
・誰を受益者にするのか
・期限はいつからいつまでか
(例えば不安なこと・・)
・認知症などによる資産凍結リスクに備えたい
・所有不動産の塩漬けを避けたい
・認知症の配偶者の財産管理のため
・障害のある子の生涯にわたる安定した生活のため
・思い描いた相続を実現するため
・事業がストップするリスクを避けるため
・唯一財産となる自宅を争いの種にしないよう共有を避けたい
・資産の有効活用のため など
★遺言書で叶わない心配があるのであれば家族信託を考えてみてはいかがでしょう?
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